"教える"の逆方向こそが大事だ!: 藤沢晃治「「分かりやすい教え方」の技術」

どんな立場の人間でも、何かを人に教えるという機会を持つことは少なからずある。友人にPCの使い方を教える、先輩として、後輩に作業の仕方を教える、等々。そんな時、どういう風に教えていいかわからなかったり、自己流で教えて、うまくいかなかったりしたことが、自分にもあった。

本書では、著者の経験から導出された、教え方の5つの「心構え」、8つの「技術」を通して、「分かりやすい教え方」の秘訣が披露される。本書が教える「教え方」においては、先生から生徒へ教える、という流れの「逆方向」が重要なポイントである。

5つの「心構え」と8つの「技術」

本書における5つの「心構え」と8つの「技術」とは以下のものである。各項目の詳細は書籍を読んで確認のこと。

  • 心構え1: 先生役を気楽に引き受けよ
  • 心構え2: 生徒をお客様と思え
  • 心構え3: 生徒の「文化」を尊重せよ
  • 心構え4: 生徒を「可能性のタネ」と見よ
  • 心構え5: 生徒を楽しませよ
  • 技術1: 生徒のレベルに合わせよ
  • 技術2: 「目標」を認識させよ
  • 技術3: 「魔の挫折地帯」を認識させよ
  • 技術4: 目標を分解せよ
  • 技術5: 「腹八分目」を守れ
  • 技術6: 褒めて伸ばせ
  • 技術7: 「反復」と「映像化」で脳に刻み込め
  • 技術8: 「与える」よりも「引き出せ」

"教える"の逆方向こそが大事だ

本書に通底する思想は、「"教える"の逆方向こそが大事だ」ということ。

「教える」ことの最終目標は、生徒に「教えた内容」を身につかせること。そのためには、生徒が、「教わった内容」を自分で考え、質問し、咀嚼、定着させることが重要となる。この「生徒が自分で考える」ということが、本書の「逆方向」の基本的な意味だ。

この「逆方向」については、本書では主に「技術8」において述べられている。ここで、「逆方向」の意味をもう少し拡張して、「生徒の立場に寄り添って教えること」もその意味の一つだと考えよう。すると、上述した技術、心構えの多くが「逆方向」を下支えするものであることがわかる。

例えば、「技術1」は、ただ一方的に教えるのではなく、生徒それぞれの個性やレベルに合わせて、教え方を調整すべし、ということだ。その他のものも、「生徒の立場」を重視していることは、明らかであろう。

「教える」ことは、先生から生徒への一方的な伝達ではない。先生と生徒とのコミュニケーションによる協同作業である。このことを常に頭に入れて「教える」ことにしようと、本書を読んで思った。