論文とか教科書でギャグ飛ばすのって、結構チャレンジングだよね

「論文で小粋なジャパニーズジョークをとばしてみたい」とずっと思いながら、大学での研究生活が終わろうとしている今日この頃。


堅苦しい内容が多い場面でこそ、ジョークで読む人を和ませたり、小洒落た例え話で笑いを誘ったりしてみたい。そう考えることが私にはよくある。

以前、研究会のプレゼンの場で、実際にギャグを言ってみたことがある。言う前は、「もし全く笑いが起こらなかったら故郷(くに)に帰ろうか」などと真剣に思い悩んでいた。一応少しだけ笑ってもらえたので、故郷には一時帰省するに留めたのだった。

一方で、その場限りのプレゼンとは違い、論文はカタチが残るもの。そこにジョークをはさもうとするのは、なかなか勇気が必要だ。論文と関連する気の利いた内容も思いつかず、結局今にいたるまで、ジョークを論文で書いたことはない。

TeXの開発者で、The Art of Computer Programming シリーズの著者でもあるクヌースは、技術論文におけるユーモアについて、次のように言っている。

技術論文にユーモアを含めるには、そこで述べている技術的な内容を理解できたときにだけわかるようなものに限ったほうがよい。さきにあげた Linderholm の本から、もうひとつ例を引用しておく。

... \emptyset D = \emptyset and N \emptyset = N, which we may express by saying that 0*1 is absorbing on the left and neutral on the right, like British toilet paper.
{... \emptyset D = \emptyset かつ N \emptyset = N であるから、 \emptyset は左側からは吸収され、右側からは変化しない。ちょうど英国のトイレットペーパーのような性質をもっている。}

2度目あるいは3度目に読んでみても、残しておいたほうがよいと思うジョークに限ることが賢明である。また感嘆符を使いすぎないように!


D. E. Knuth 他「クヌース先生のドキュメント纂法」、共立出版、1989、pp. 8-9

ちなみに、私はこのギャグの意味が未だわからない。


IT系の技術書なんかを読むと、ジョークが書かれていることは少なからずある。技術書といっても、学校で使う教科書のようにお堅いものから、全編にわたってくだけた語りのものまで、そのスタイルは幅広い。個人的には、ハードコアな内容で、シリアスな語り口ながら、それを吹き飛ばすようなジョークをまれに放つ、というのが好みである。


この文章を読んだ皆さんは、論文(や教科書などの硬い媒体)でジョークを書くことをどう思いますか。また、そういう媒体でジョークを書いたことはありますか。


余談: 最近読んだ教科書(的な本)で "ニヤッ" とした表現を引用してみる。

なお、B木のBは、B木の考案者のバイヤー(R. Bayer)のイニシャルのBなのか、balanced tree の頭文字のBなのか、どうなんですか? と問うても、彼はニヤッとするばかりで決して答えない。


増永良文「リレーショナルデータベース入門―データモデル・SQL・管理システム (Information&Computing)」、サイエンス社、2003、p. 209

*1:ママ。