前置詞の豊かさと広がり: 宗宮喜代子/石井康毅/鈴木梓/大谷直輝 「道を歩けば前置詞がわかる」その1


その2その3

所感

英語前置詞について解説している本は多くあるが、そのなかでもなかなか面白い。前置詞が、その基本的な意味から次第に広がりを増してさまざまな意味合いをもっていくさま、あるいは句動詞において前置詞のイメージが重要な役割を果たしているさまなど、前置詞にまつわるあれこれが、この本を読むことで身につくんじゃないかと思う。


道を歩けば前置詞がわかる

道を歩けば前置詞がわかる


本書では、前置詞のなかでも大きな位置を占めている空間前置詞をメインに扱っている。なお、本書のタイトルは、その空間前置詞のイメージをつかむため、人間にとって普遍的な「道を歩く」という経験を活用しているところに由来している。


以下は読書メモ。本書の中で、私が気になったところを重点的にメモしたものですが、ブログの読者の方にとっても少しは役に立つかと思います。

空間前置詞を体感する - 道を歩けば前置詞が見える

ひとが道を歩く経験をもとに、空間前置詞を理解していこう。

on
人が大地に立った(大きなものに小さなものが接触している)イメージ。そこから、「被害」なども表す
    • Father was standing on the front porch. / A fly is on the ceiling./ I cut my finger on the knife. (ナイフで指を切った: withだとナイフという道具で「故意」に切った、というイメージ) / He is sitting on my left. / Let's have a drink. It's on me. (いっぱいやろうよ。おごるから)
off
道からはずれているイメージ。onは道に乗っている
onとoff
onは活動、offは休止のイメージ
    • The light is on/off. / The news turned me on/off. (興奮した/しらけた)
onとin
onは活動、inは状態のイメージ
    • I'm on my way. (今いきます) / She is in my way. (彼女が邪魔だ=私の行く道をふさいでいる状態)
to
目標へ一直線、のイメージ
fromとof
fromは距離感を表し、ofは一体感を表す
    • die of/from ... 直接/間接的要因で死ぬ
    • made of leather (皮製だ=原料から変化がない) / made from wood (木材から作られる=原料から変化が大きい)
toとfor
toははっきり、forはあいまい
    • Listen to the rhythm of the falling rain. (雨音のリズムをきいてごらん) / She listened for the sound of a train. (列車の音がきこえないかなと耳をすました)
toとwith
toは一方向、withは双方向
    • I stapled a memo to the document. / Link this computer with that one.
    • He agreed to my request. (要求を受け入れた) / I agree with every word you've just said. (君の発言とまったく同意見だ)
toとtoward
toはずばり、towardはだいたい
    • She looked to him for help. / She was standing on the porch, looking toward the setting sun.
over
覆っているイメージ。静止/動作や時間の長さは問わない。そこから広がって「徹底的に/もう一度」「その間中」なども表す
    • A lamp hangs over the table. / The plane flew over the city. / Please look over my composition. (作文をチェックしてください) / I walked all over the street. / 10 over 2 is 5. (10 / 2 = 5) / We talked over coffee. (コーヒーを飲みながら話した=コーヒーの上を話が飛び交っているイメージ)
overとacross
overは上方指向をもった横断、acrossは水平的な横断
    • They gazed over the valley. (谷を眺め渡した) / They gazed across the valley. (谷の向こう側を眺めた)
at
全体を視野に入れた上で、一点に着目。対象との距離が近い=感情を表現できる
atとin
atは外側の視点をもち、inは一つのものの内側だけを見る
    • We met at that bookstore. (本屋で会ったあと、別の所へ一緒にいったかも) / We met in that bookstore. (本屋で会ったあと、その店の内部で交流した)
atとto
atは至近距離、toは目標との間に距離
by
近接する他者。他者との間には境界領域/接点/隔たりが存在する。表される他者は、無意思的/意思的なもの両方ある
    • He passed by me. / We had a picnic by the beach. (海辺に近いところ) / He held the dog by the collar. (犬の首輪を押さえていた) / This is by far the better of the two. / Eggs are sold by the dozen. / We came by car. / This picture was painted by her.
with
自らの行動規範をもたず、行動をともにしてくれる他者、状況
    • He walks with a stick. / Gone with the Wind. (風とともに去りぬ) / The risk of heart attack increases with age. (加齢とともに増大する) / She prepared the dish with great care.
withとin
withは動的、inは静的
    • Write with a pencil. (鉛筆を道具として使っていることに焦点) / Write in pencil. (書かれる文字が鉛筆由来の黒鉛でできていることに焦点)
withとby
withは随伴者、byは他者
    • The mountain was covered with snow. / The man was hit by a car.


その2へ続く。