virtual の新しい訳語をいろいろ考えてみた

"virtual" を「仮想」と訳すといろいろ誤解を招く、ということに気づいたのは、おそらく高校生の時。英和辞書で「(名目上は違うが)実質上の」という訳が第一に上がっていた時だった*1。それ以来、virtual という形容詞がついた熟語に接する時は、それがどういう意味かゆっくり考えるようにしていた。

今回、「virtualを「仮想」と訳していいものか - やねうらお−ノーゲーム・ノーライフ」という記事を読んで、改めて virtual という単語について、特にその訳語について考えてみた。

課題設定

ここでは、"virtual" が「(名目上は違うが)実質上の」という意味で使われる場合の訳をどうするか、を課題とする。

現行訳の問題点

「仮想」という訳語の一番の問題は、「仮」も「想」もどちらも「現実ではない」という意味合いを持ち、したがって「(名目上は違うが)実質上の」という意味合いを想起できないことにある。

ゆえに、「仮想」という単語のどちらかの漢字を、「実質」という意味合いを持つ漢字で置き換えるという方法が考えられる。または、二字熟語にとらわれず、「実質」の意味合いを持つカタカナや平仮名を使うという方法もあるだろう。

新訳考察

バーチャル

うまく表す日本語がないなら、英単語をそのまま使うというのも一つの手だ。しかし今は新訳を考えているので、これは除外する。

みなし

はてなブックマーク - virtualを「仮想」と訳していいものか - やねうらお−よっちゃんイカを食べながら、しばし休息しよう。」で何人かが提案している。「みなし関数」「みなしメモリ」「みなし現実」など。ただ、個人的には、「実質的に本物と同じである」という意味合いがあまり出ていない点や、やや訳語が「軽い」点が欠点ではないかと思う。

実想、真想、現想

「仮」を「実質」の意味合いをもつ漢字で置き換えた訳語。ただ、「想」という単語が後ろにあるため、熟語全体として「本物でない」という意味合いのほうが強調されやすいのが難点か。

想実、想真、想現

上記の3つの二字熟語で、「想」を前に持ってきたもの。「実」「真」「現」という「実質」を表す漢字が後ろにきているため、「(ほぼ)本物である」という意味合いが強調できる。

熟語の構成としては、「上の字が下の字を修飾する」という形(「仮想的なほんもの」)。

3つのうちどれがいいかという話だが、「想実」「想現」の2つは、"virtual reality" が「想実現実」「想現現実」となってしまい、熟語のバランスが悪くなる。

「想真」ならば、「想真現実」となり、熟語としてのバランスは悪くない。「想真メモリ」「想真関数」などもバランスはいい。

結論

"virtual" の「(名目上は違うが)実質上の」という意味の訳として、「想真」を新たに提案してみる。個人的にはそこそこいいかなとは思うが、もっといい訳も考えられるだろう。

新しい訳語を考えることは、言葉を深く掘り下げて考えること。これって、結構面白い。

*1:余談だが、"virtual" 以外に誤解を招きやすい単語に「虚構」がある。これも「現実とは違うつくりもの」というよりも、「より現実らしくなるようにつくりあげられたもの」といった意味合いがある。